巻頭 山家集 新古より抜粋西行  
           

   西行 
     (一一一八〜一一九〇)


                 目次
    
          
新古今和歌集 西行関係分抜粋


          
山家集


                春歌
                夏歌
                秋歌

                冬歌
                離別歌
                羇旅歌
                賀歌
                戀歌

                雜歌

                哀傷歌
                釋教歌

                神祇歌


カスタム検索
 

 

              

       新古今和歌集 西行関係分抜粋


                                 新古
いはまとぢしこほりもけさはとけそめてこけのしたみづみちもとむらん

                                 二七 
 春哥とて
ふりつみしたかねのみゆきとけにけりきよたき河の水のしらなみ

                                 五一
 題しらず
とめこかしむめさかりなるわがやどをうときも人はおりにこそよれ

                                 七九
よしの山さくらがえだにゆきちりて花をそげなるとしにもあるかな

                                 八六
 花哥とてよみ侍ける
よしの山こぞのしほりのみちかへてまだ見ぬかたの花をたづねん

                                 一二六
 題しらず
ながむとて花にもいたくなれぬればちるわかれこそかなしかりけれ
 
                                 二一七
 題しらず
きかずともこゝをせにせんほとゝぎす山田のはらのすぎのむらだち
 
                                 二一八
郭公ふかきみねよりいでにけりと山のすそに声のおちくる
 
                                 二六二
 題しらず
みちのべにしみづながるゝやなぎかげしばしとてこそたちとまりつれ
 
                                 二六三
よられつるのもせの草のかげろひてすゞしくゝもる夕立の空
 
                                 二九九
 題しらず
をしなべてものをおもはぬ人にさへ心をつくる秋のはつ風
 
                                 三〇〇
あはれいかに草葉のつゆのこぼるらん秋風たちぬみやぎのゝはら
 
                                 三六二
こゝろなき身にも哀はしられけりしぎたつさはの秋のゆふぐれ
 
                                 三六七
おぼつかな秋はいかなるゆへのあればすゞろにものゝかなしかるらん
 
                                 四四八
を山だのいほちかくなくしかのねにおどろかされておどろかすかな
 
                                 四七二
 題しらず
きりぎりすよさむに秋のなるまゝによはるか声のとをざかりゆく
 
                                 五〇一
よこ雲の風にわかるゝしのゝめに山とびこゆるはつかりの声
 
                                 五〇二
白雲をつばさにかけてゆくかりのかど田のおものともしたふなる
 
                                 五三八
 題しらず
松にはふまさのはかづらちりにけりと山の秋は風すさぶらん
 
                                 五七〇
月をまつたかねの雲ははれにけり心あるべきはつしぐれかな
 
                                 五八五
 題しらず
あきしのやと山のさとやしぐるらんいこまのたけに雲のかゝれる
 
                                 六〇三
をぐら山ふもとのさとにこの葉ちればこずゑにはるゝ月をみるかな

                                 六二五
つのくにのなにはの春は夢なれやあしのかれ葉に風わたる也

                                 六二七
 題しらず
さびしさにたへたる人の又もあれないほりならべん冬の山ざと
 
                                 六九一
 歳暮に、人につかはしける
をのづからいはぬをしたふ人やあるとやすらふほどにとしのくれぬる

                                 六九七
 題しらず
むかしおもふ庭にうき木をつみをきて見しよにもにぬとしのくれかな

                                 七九三
 みちのくにへまかれりける野中に、めにたつさまなるつかの侍けるを、
 とはせ侍ければ、これなん中将のつかと申すとこたへければ、
 中将とはいづれの人ぞととひ侍ければ、実方朝臣の事となん申けるに、
 冬の事にて、しもがれのすゝきほのぼの見えわたりて、
 おりふしものがなしうおぼえ侍ければ

くちもせぬその名ばかりをとゞめをきてかれ野のすゝきかたみとぞみる
 
                                 八三一
 無常のこゝろを
いつなげきいつおもふべきことなればのちのよしらで人のすむらん

                                 八三七
 人にをくれてなげきける人につかはしける
なきあとのおもかげをのみ身にそへてさこそは人のこひしかるらめ
 
                                 八三八
 なげくこと侍ける人、とはずとうらみ侍ければ
哀ともこゝろにおもふほどばかりいはれぬべくはとひこそはせめ
 
                                 八八五
 みちのくにへまかりける人、餞し侍けるに
君いなば月まつとてもながめやらんあづまのかたのゆふぐれの空
 
                                 八八六
 とをき所に修行せんとていでたち侍けるに、
 人々わかれおしみて、よみ侍ける

たのめをかん君もこゝろやなぐさむとかへらん事はいつとなくとも

                                 八八七
さりともとなをあふことをたのむかなしでの山ぢをこえぬわかれは
 
                                 九三七
 題しらず
宮こにて月をあはれとおもひしはかずにもあらぬすさびなりけり
 
                                 九三八
月見ばと契をきてしふるさとの人もやこよひ袖ぬらすらん
 
                                 九七八
 天王寺にまうで侍けるに、俄に雨ふりければ、
 江口にやどをかりけるに、かし侍らざりければ、よみ侍ける

世中をいとふまでこそかたからめかりのやどりをおしむ君かな
 
                                 九七九
 返し          遊女妙
よをいとふ人としきけばかりの宿に心とむなと思ふばかりぞ
 
                                 九八七
 あづまのかたにまかりけるに、よみ侍ける
年たけて又こゆべしと思きや命なりけりさやの中山
 
                                 九八八
 旅哥とて
思ひをく人の心にしたはれて露わくる袖のかへりぬるかな
 
                                 一〇九九
はるかなるいはのはざまにひとりゐて人めおもはで物おもはゞや
                                 
                                 一一〇〇
かずならぬ心のとがになしはてじしらせてこそは身をもうらみめ

                                 一一四七
なにとなくさすがにおしきいのちかなありへば人や思しるとて
 
                                 一一四八
おもひしる人ありけりのよなりせばつきせず身をばうらみざらまし
 
                                 一一五五
 題しらず
あふまでのいのちもがなとおもひしはくやしかりけるわが心かな
 
                                 一一八五
 題しらず
おもかげのわするまじきわかれかななごりを人の月にとゞめて
 
                                 一一九三
ありあけはおもひいであれやよこ雲のたゞよはれつるしのゝめのそら
 
                                 一二〇〇
 題しらず
人はこで風のけしきもふけぬるにあはれに雁のをとづれてゆく
 
                                 一二〇五
 恋哥とてよめる
たのめぬに君くやとまつよゐのまのふけゆかでたゞあけなましかば
 
                                 一二三〇
あはれとて人の心のなさけあれなかずならぬにはよらぬなげきを
 
                                 一二三一
身をしれば人のとがとはおもはぬにうらみがほにもぬるゝ袖かな
 
                                 一二六七
月のみやうわのそらなるかたみにておもひもいでば心かよはん
 
                                 一二六八
くまもなきおりしも人を思いでゝ心と月をやつしつるかな
 
                                 一二六九
ものおもひてながむるころの月のいろにいかばかりなる哀そむらん
 
                                 一二九七
うとくなる人をなにとてうらむらんしられずしらぬおりもありしに
 
                                 一二九八
今ぞしるおもひいでよと契しはわすれんとてのなさけなりけり
 
                                 一三〇七
あはれとてとふ人のなどなかるらんものおもふやどのおぎのうは風

                                 一四七一
世中をおもへばなべてちる花のわが身をさてもいづちかもせん
 
                                 一五三二
 題しらず
月を見て心うかれしいにしへの秋にもさらにめぐりあひぬる
 
                                 一五三三
よもすがら月こそそでにやどりけれむかしの秋をおもひいづれば
 
                                 一五三四
月のいろに心をきよくそめましや宮こをいでぬわが身なりせば\

                                 一五三五
すつとならばうきよをいとふしるしあらんわれみばくもれ秋のよの月
 
                                 一五三六
ふけにけるわが身のかげをおもふまにはるかに月のかたぶきにける
 
                                 一五六二
 題しらず
雲かゝるとを山ばたの秋さればおもひやるだにかなしき物を
 
                                 一六一三
 伊勢にまかりける時よめる
すゞか山うきよをよそにふりすてゝいかになりゆくわが身なるらん
 
                                 一六一五
 あづまのかたへ修行し侍けるに、ふじの山をよめる
風になびくふじのけぶりのそらにきえてゆくゑもしらぬわが思哉
 
                                 一六一九
 題しらず
よしの山やがていでじとおもふ身を花ちりなばと人やまつらん
 
                                 一六三二
 題しらず
山ふかくさこそ心はかよふともすまであはれをしらんものかは
 
                                 一六三三
やまかげにすまぬこゝろはいかなれやおしまれている月もあるよに
 
                                 一六四二
 題しらず
たれすみて哀しるらん山ざとの雨ふりすさむゆふぐれの空

                                 一六四三
しほりせでなを山ふかくわけいらんうきこときかぬ所ありやと
 
                                 一六五九
やまざとにうきよいとはんともゝがなくやしくすぎし昔かたらん
 
                                 一六六〇
山ざとは人こさせじとおもはねどとはるゝことぞうとくなりゆく
 
                                 一六七六
ふるはたのそばのたつきにゐるはとのともよぶ声のすごきゆふぐれ
 
                                 一六七七
山がつのかたをかゝけてしむる野のさかひにたてる玉のを柳
 
                                 一六七八
しげきのをいくひとむらにわけなしてさらにむかしをしのびかへさん
 
                                 一六七九
むかし見し庭のこ松にとしふりて嵐のをとをこずゑにぞきく
 
                                 一六八二
これや見しむかしすみけんあとならんよもぎがつゆに月のかゝれる
 
                                 一七四八
かずならぬ身をも心のもちがほにうかれては又かへりきにけり

                                 一七四九
をろかなる心のひくにまかせてもさてさはいかにつゐのおもひは
 
                                 一七五〇
とし月をいかでわが身にをくりけん昨日の人もけふはなきよに
 
                                 一七五一
うけがたき人のすがたにうかびいでゝこりずやたれも又しづむべき
 
                                 一七八〇
いづくにもすまれずはたゞすまであらんしばのいほりのしばしなるよに
 
                                 一七八一
月のゆく山に心をゝくりいれてやみなるあとの身をいかにせん
 
                                 一八〇八
またれつる入あひのかねのをとすなりあすもやあらばきかんとすらん
 
                                 一八二八
世をいとふ名をだにもさはとゞめをきてかずならぬ身のおもひいでにせん
 
                                 一八二九
身のうさをおもひしらでやゝみなましそむくならひのなきよなりせば
 
                                 一八三〇
いかゞすべきよにあらばやはよをもすてゝあなうのよやとさらにおもはん
 
                                 一八三一
なに事にとまる心のありければさらにしも又よのいとはしき
 
                                 一八四二
なさけありしむかしのみ猶しのばれてながらへまうき世にもふるかな
 
                                 一八四四
 寂蓮、人々すゝめて百首哥よませ侍けるに、いなび侍て熊野にまうでける道にて、
ゆめに、なにごともおとろへゆけど、このみちこそよのすゑにかはらぬものはあれ、
なをこのうたよむべきよし、別当湛快、三位俊成に申と見侍て、
おどろきながらこの哥をいそぎよみいだしてつかはしけるおくにかきつけ侍ける

すゑのよもこのなさけのみかはらずと見し夢なくはよそにきかまし
 
                                 一八七七
 題しらず
宮ばしらしたついはねにしきたてゝつゆもくもらぬ日のみかげ哉
 
                                 一八七八
神ぢ山月さやかなるちかひありてあめのしたをばてらすなりけり

                                 七九
 伊勢の月よみのやしろにまいりて、月を見てよめる
さやかなるわしのたかねの雲井よりかげやはらぐる月よみのもり

                                 一九七五
 西行法師をよび侍けるに、まかるべきよしは申ながらまうでこで月の
 あかゝりけるに、かどのまへをとおるときゝて、よみてつかはしける    
       待賢門院堀河

にしへゆくしるべとおもふ月かげのそらだのめこそかひなかりけれ
 
                                 一九七六
 返し
たちいらで雲まをわけし月かげはまたぬけしきやそらにみえけん

                                 一九七八
 観心をよみ侍ける
やみはれて心のそらにすむ月はにしの山べやちかくなるらん

 承元三年六月十九日書之
 同七月廿二日依重 勅定被改直之
 以相伝秘本祖父卿真筆具書写校合了
 正安二年黄鐘下旬右兵衛督為相

 
                                 一九九三
 題しらず
 [被出之]
ねがはくは花のしたにて春しなんそのきさらぎのもち月の比

 


   ………………………………

  テキスト・データ::  日本語テキスト・イニシアティブURL   新古今和歌集
     編集者: 新渡戸 広明(info@saigyo.org)   編集日: 2000年11月17日
 

 


カスタム検索
 

 

       山家集  西行

     
 
   
春歌
 
                               1
 年のうちに春たちて雨の降りければ
春としもなほおもはれぬ心かな雨ふる年のここちのみして
 
 山ごもりして侍りけるに、年をこめて春に成りぬと聞きけるからに、
 霞みわたりて、山河の音日頃にも似ず聞えければ

かすめども年のうちとはわかぬ間に春を告ぐなる山川の水
 
 山ふかく住み侍りけるに、春立ちぬと聞きて
山路こそ雪のした水とけざらめ都のそらは春めきぬらむ

 山里に春たつといふことを
山里は霞みわたれるけしきにて空にや春の立つを知るらむ
 
 難波わたりに年超えに侍りけるに、春立つこころをよみける
いつしかも春きにけりと津の國の難波の浦を霞こめたり

 春になりける方たがへに、志賀の里へまかりける人に具してまかりけるに、
 逢坂山の霞みたりけるを見て

わきて今日あふさか山の霞めるは立ちおくれたる春や越ゆらむ
 
 立春の朝よみける
年くれぬ春くべしとは思ひ寐にまさしく見えてかなふ初夢
 
山の端の霞むけしきにしるきかな今朝よりやさは春のあけぼの
 
春たつと思ひもあへぬ朝とでにいつしか霞む音羽山かな
                               10
たちかはる春を知れとも見せがほに年をへだつる霞なりける
 
とけそむる初若水のけしきにて春立つことのくまれぬるかな
 
 春立つ日よみける
何となく春になりぬと聞く日より心にかかるみ吉野の山
 
 正月元日雨ふりけるに
いつしかも初春雨ぞふりにける野邊の若菜も生ひやしぬらむ
 
 家々に春を翫ぶといふことを
門ごとにたつる小松にかざされて宿てふやどに春は來にけり
 
 初春
岩間とぢし氷も今朝はとけそめて苔の下水みちもとむらむ
 
ふりつみし高嶺のみ雪とけにけり清瀧川の水のしらなみ
 
 春きて猶雪
かすめども春をばよその空に見て解けんともなき雪の下水
 
 題しらず
三笠山春はこゑにて知られけり氷をたたく鶯のたき
 
春あさみ篠(すず)のまがきに風さえてまだ雪消えぬしがらきの里
                               20
 嵯峨にまかりたりけるに、雪ふかかりけるを見おきて出でしことなど申し遣わすとて
おぼつかな春の日數のふるままに嵯峨野の雪は消えやしぬらむ
                               
 かへし
                     靜忍法師
立ち歸り君やとひくと待つほどにまだ消えやらず野邊のあわ雪
 
 題しらず
春しれと谷の下みづもりぞくる岩間の氷ひま絶えにけり
 
小ぜりつむ澤の氷のひまたえて春めきそむる櫻井のさと
 
くる春は嶺の霞をさきだてて谷のかけひをつたふなりけり
 
雪とくるしみゝにしだくから崎の道行きにくきあしがらの山
 
 元日子日にて侍りけるに
子日してたてたる松に植ゑそへむ千代かさぬべき年のしるしに
 
 子日
春ごとに野邊の小松を引く人はいくらの千代をふべきなるらむ
 
ねの日する人に霞はさき立ちて小松が原をたなびきにけり
 
子日しに霞たなびく野邊に出でて初うぐひすの聲をきくかな
                               30
 五葉の下に二葉なる小松どもの侍りけるを、子日にあたりける日、
 折櫃にひきそへて遣わすとて

君が爲ごえふの子日しつるかなたびたび千代をふべきしるしに
 
 ただの松ひきそへて、この松の思ふこと申すべくなむとて
子日する野邊の我こそぬしなるをごえふなしとて引く人のなき
 
 若菜
春日野は年のうちには雪つみて春は若菜のおふるなりけり
 
 雪中若菜
けふはただ思ひもよらで歸りなむ雪つむ野邊の若菜なりけり
 
 雨中若菜
春雨のふる野の若菜おひぬらしぬれぬれ摘まん籠(かたみ)手ぬきれ
 
 若菜に初子のあひたりければ、人のもとへ申しつかはしける
わか菜つむ今日に初子のあひぬれば松にや人の心ひくらむ
 
 若菜に寄せてふるきを思ふということを
わか菜つむ野邊の霞ぞあはれなる昔を遠く隔つと思へば
 
 老人の若菜といへることを
卯杖つき七くさにこそ出でにけれ年をかさねて摘める若菜に
 
 寄若菜述懷といふことを
若菜おふる春の野守に我なりてうき世を人につみ知らせばや
 
 野に人あまた侍りけるを、何する人ぞと聞きければ、菜摘む者なりと答へけるに、
  年の内に立ちかはる春のしるしの若菜か、さはと思ひて

年ははや月なみかけて越えにけりうべつみけらしゑぐの若だち
                               40
 題しらず
澤もとけずつめど籠(かたみ)にとどまらでめにもたまらぬゑぐの草ぐき
 
 海邊の霞といふことを
もしほやく浦のあたりは立ちのかで烟あらそふ春霞かな
 
 おなじこころを、伊勢の二見といふ所にて
波こすとふたみの松の見えつるは梢にかかる霞なりけり

 霞によせてつれなきことを
なき人を霞める空にまがふるは道をへだつる心なるべし

 世にあらじと思いける頃、東山にて、人々霞によせて思ひをのべけるに
そらになる心は春の霞にてよにあらじとも思ひたつかな

 おなじ心をよみける
世を厭ふ名をだにもさはとどめ置きて數ならぬ身の思出にせむ

 題しらず
霞まずは何をか春と思はましまだ雪消えぬみ吉野の山

 梅を
香にぞまづ心しめ置く梅の花色はあだにも散りぬべければ

梅をのみわが垣ねには植ゑ置きて見に來む人に跡しのばれむ
 
とめこかし梅さかりなるわが宿をうときも人は折にこそよれ
                               50
 山里の梅といふことを
香をとめむ人をこそまて山里の垣根の梅のちらぬかぎりは

心せむ賤が垣ほの梅はあやなよしなく過ぐる人とどめける

この春はしづが垣ほにふれわびて梅が香とめむ人したしまむ

 旅のとまりの梅
ひとりぬる草の枕のうつり香は垣根の梅のにほひなりけり

 古き砌の梅
何となく軒なつかしき梅ゆゑに住みけむ人の心をぞ知る
 
 嵯峨に住みけるに、道を隔てて坊の侍りけるより、梅の風にちりけるを
ぬしいかに風渡るとていとふらむよそにうれしき梅の匂を

 庵の前なりける梅を見てよめる
梅が香を山ふところに吹き